共鳴と競鳴。チャットモンチーのベストアルバム『BEST MONCHY 1』をヘッドホンで聴いたら新世界が開けた話
音楽とは不思議なもので、その曲を聴いていた当時の風景や出来事など、いつの間にか忘れてしまっていた懐かしい記憶を呼び覚ましてくれる。
「あの頃はあいつと仲が良くて、ほんとくだらないことばかり話してよく遊んだなぁ」とか「毎日毎日部活に打ち込んで汗を流して、学校帰りにはコンビニでアイス買って食ってたなぁ」とか、私の場合は高校~大学の頃のいわゆる青春時代の記憶が強く鮮明に蘇ってくる。自分にとって音楽を一番聴いていた時期がその頃だったということもあるのかもしれない。スカパーの音楽チャンネルでやってた邦楽TOP100のPVを一日中見てたりとか、当時の自分に「どんだけ暇だよ」と言ってやりたいくらい音楽を聴いていた(見ていた)。
その頃よく聴いていたのが『チャットモンチー』という3ピースガールズロックバンドだ。ガールズバンドの中でも一際異彩を放ち、当時まだ少なかったガールズバンドという存在を牽引してきたといっても過言ではないだろう。
彼女たちが奏でる力強いメロディーと可愛らしくも棘のある歌詞は、その相反する要素の共存により『チャットモンチー』という新たなジャンルと言えるほどの圧倒的な個性を生み出していたのだ。
何かの音楽番組でチャットモンチーの代表曲でもある『シャングリラ』という曲を初めて聴いて、その不安定で枠にはまらない独特のリズムに、私は今まで感じたことのない「心地良さ」を覚え、すぐに彼女たちの曲の虜になってしまった。毎日のようにアルバムを聴き込んでいたことをよく覚えている。
大学を卒業し働き出してからは音楽を聴く機会も減り、自然消滅的に『チャットモンチー』も聴かなくなってしまったのだが、最近になって彼女たちの解散を知った。「そうか、いつかは終わってしまうんだなぁ」と何とも言えない心にぽっかりと穴が開いたような感覚に陥ってしまった。
ところが解散を機に巡り合うものもあったのだ。
チャットモンチーのベストアルバム『BEST MONCHY 1-Listening-』である。
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13年間走り続けてきたチャットモンチーの歴史が詰まっており、すべてのシングル曲とアルバムリード曲が収録されている。集大成であると同時にどことなく寂しさを感じるジャケット写真は、見るたびに泣きそうになってしまう。「あぁ、やっぱり終わってしまったんだな」と・・・。
チャットモンチー愛に再び火がついた私は、すぐさまベストアルバムを手に入れた。
せっかく聴くなら良い環境が良いと思い、少ないおこづかい(ちゃんと働いてます)を叩いて最近やっと手に入れたちょっと良いヘッドホン『Creative Aurvana Live! HP-AURVN-LV』を引っ張り出してきて、早速アルバムを聴いてみた。
Creative ヘッドホン Aurvana Live! HP-AURVN-LV
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当時はイヤフォンで聴いていたし、このヘッドホンを買うまではイヤフォンしか使ってこなかった。やはりちょっと良いヘッドホンは違う。細かな音まで逃さず拾ってくれるし、何と言ってもボーカルのえっちゃんこと橋本絵莉子さんがまるで目の前で歌ってくれているかのような鮮明で生な音質。さすがコスパ最強ヘッドホンである。
結果、泣いた。30歳にして名曲『サラバ青春』で号泣。夜道を一人散歩しながら・・・。懐かしい曲の数々に当時の記憶が走馬灯のように蘇り、彼女たちの(バンドとして)生きてきた証を一曲一曲肌で感じた。
さらにヘッドホンのおかげで、今まで幾度となく聴いてきた曲の中の「新たな音や歌声」に気づくことができた。チャットモンチーの奏でる音楽も、イヤフォンで聴いていた時とは比べものにならないくらいの力強さを感じた。
彼女たちのアルバムタイトルにもあるように、これまで私はチャットモンチーが奏でる音楽とは彼女たちの個性が「共鳴」して生まれているのだと思っていた。だがそれだけではなかったのだ。彼女たち一人一人の生命の雄叫びとも言える力強い演奏が激しくぶつかり合い一つになることで、『チャットモンチー』の音楽は形作られている。それは「共鳴」と「競鳴」によるものだったのだ。
ヘッドホンを通して聴くチャットモンチーは、まるで新しい世界が開けたかのように新鮮で、彼女たちの音楽にかける情熱を今まで感じてきた以上に知ることができた。
チャットモンチーは2018年7月をもって完結した。「完結」という表現がいかにも彼女たちらしく、その二文字には、強い決心とこれまで歩んできた全ての人・曲・場所への感謝の気持ちがあらわれている。名曲『サラバ青春』の歌詞にもあるように彼女たちもいつかまた再会し、あの頃は青くさかったねと笑い話をするのだろうか。そんな場面を想像するだけでまた涙がこぼれてしまいそうである。
きっといつの日か笑い話になるのかな
あの頃は青くさかったなんてね
水平線に消えていく太陽みたいに
僕らの青春もサラバなのだね
サラバ青春 サラバ青春
青春を共にしてきたチャットモンチーのことを、私は一生忘れることはないだろう。
しばらくはこの『サラバ青春』を涙をこらえながら、毎日大切に聴いていこうと思う。
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